沖縄で深夜酒類提供飲食店を開業するには

こんにちは!沖縄県の行政書士竹倉事務所です。

この記事では沖縄県で深夜酒類提供飲食店(例えば午前0時を過ぎてお酒を提供するバーやスナック、居酒屋など)を開業するために必要な手続きについての要件、手続きについて解説します。

目次

1. 深夜酒類提供飲食店営業とは? なぜ届出が必要なのか?

まず、「深夜酒類提供飲食店」とは午前0時から午前6時までの深夜時間帯に主として酒類を提供する飲食店のことです。

居酒屋、バー、スナックなどがこれに該当し、これらのお店が深夜も営業する場合には届出が義務付けられています。

無届で深夜営業を行った場合、罰則の対象となります。罰金が科される可能性があり、指導後も改善が見られない場合は業務停止処分を受けることもあります。

深夜にお酒を出していても、牛丼屋やラーメン屋など主にご飯や麺などの食事を提供する店であれば、届出は必要ありません。
ここでいう「主食」とは、ごはん、パン(※菓子パンは除く)、麺、ピザなどを指します。

つまり、ポイントはお酒を出しているかどうかではなく、「主食を中心に提供しているかどうか」です。

【注】 居酒屋については、状況によって届出が必要な場合と不要な場合があります。多くのケースでは居酒屋は深夜酒類提供飲食店の対象として扱われますが、主食提供の割合などによって判断が分かれる可能性もあります。ご自身の店舗が該当するか不明な場合は、必ず管轄の警察署に事前に確認しましょう。

2. 沖縄県での深夜酒類提供飲食店営業の届出要件

深夜酒類提供飲食店として営業を行うためには、店舗が場所的要件と構造的要件という二つの基準を満たしている必要があります。

沖縄県における要件は以下の通りです。

<場所的要件>

深夜営業ができる地域は、「用途地域」によって制限されています。

沖縄県の条例によると、深夜酒類提供飲食店営業は、第1種地域および第3種地域では深夜(午前0時~午前6時)に営業することはできません。

•第1種地域 第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域

•第3種地域:住居地域のうち、公安委員会規則で定める地域

用途地域については、市区町村の都市計画課や自治体のウェブサイトで確認できます。

風俗営業(接待を伴うキャバクラやスナックなど)の場合には、学校や病院などの「保全対象施設」から一定距離内では営業が制限されますが、深夜酒類提供飲食店はあくまで「飲食店営業」であり、原則としてこの保全対象施設からの距離制限は適用されません。

ただし、条例や用途地域によって別途制限されている場合があります。

第一種低層住居専用地域等では、飲食店営業そのものが制限されていることがあるため、事前の用途地域確認が重要です。

項目風俗営業(キャバクラ等)深夜酒類提供飲食店(バー等)
学校等からの距離制限あり原則なし
許可/届出許可制(公安委員会)届出制(公安委員会)
接待ありなし(あると風俗営業に該当)

<構造的要件>

店舗の構造や設備についても、風営法や沖縄県の条例で基準が定められており、届出後も要件を維持する必要があります。

•客室の床面積:9.5㎡以上であること(ただし、客室が1室のみの場合は制限なし)。

•見通しを妨げる設備:客室の内部に、客室の見通しを妨げる1m以上の高さの設備(例えば、間仕切りや衝立など)を設けないこと。

•善良の風俗を害するおそれのある設備、風俗を害するおそれのある写真、広告物、装飾などを設けないこと。

•営業所内の照度は20ルクス以上であること。(照度計などでテーブルの上、椅子の座面など客が通常利用する部分を測定)

•営業に伴う騒音や振動が、条例で定める数値以下であること。騒音の基準値は用途地域ごとに異なります。

•ダンスの用に供するための構造または設備を有しないこと。

•明るさを自由に調整できる調光器(スライダックス)が設置されていないこと。

設置されている場合は固定するなど明るさの調節ができないように工事が必要です。ただし、一部の照明のみが調光可能で、それが消灯していても他の照明で20ルクス以上を保てる場合は届出が受理されるケースもあります。

•客室の出入口に施錠設備を設けないこと。

3. 開業までの流れ

バーなどの深夜にお酒を提供するお店を開業するには、いくつかの手続きが必要です。特に大事なのは、「飲食店営業許可」と「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を正しい順番で行うことです。

開業までの主な流れは以下のようになります。

1.

まず、希望する場所で深夜営業ができるかどうか、用途地域や建物の条件を確認します。物件が決まったら、保健所や警察署に事前に相談すると安心です。居抜き物件でも、前のお店が許可を取っていたからといって、自分のやり方で同じように許可が出るとは限らないので、事前の確認がとても大切です。

2.

飲食店では、1店舗につき1人「食品衛生責任者」が必要です。これは、講習を受けることで取得できます。調理師免許などを持っていれば、講習が免除されることもあります。スムーズに開業するためにも、早めに受講しておくと安心です。

3.

店舗の収容人数が30人以上の場合(従業員含む)、消防法により防火管理者の選任が義務付けられています。講習を受講して資格を取得する必要があります。

4.

深夜にお酒を出すお店を始めるには、まず飲食店営業許可が必要です。これは、お店のある地域を管轄する保健所に申請します。物件が決まったら工事を始める前に保健所に相談し、工事が終わったら保健所の検査を受けます。この許可がないと、深夜営業の届出ができないので、必ず先に取っておきましょう。

5.

建物のテナントとして入居し、工事を行う場合や店舗を使用開始する場合、消防署への届出が必要です。人数に応じて防火管理者の選任届や、火を使用する設備等の設置届、店舗を使い始めるための届出などがあります。なかには使用開始の7日前までに出さないといけない書類もあるので、早めに消防署に相談しておきましょう。

6.

飲食店営業許可を取得したら、店舗の所在地を管轄する警察署の生活安全課に、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出します。営業開始の10日前までに提出する必要があります。

7.

届出後、警察による実地調査が行われます。図面との相違など指摘事項があれば、修正や書類の差し替えが必要になることもあります。構造・設備の要件を満たしているか確認しておくことが大切です。

8.

上記の手続きが完了後、営業を開始できます。

4. 深夜酒類提供飲食店営業開始届出の手続きと必要書類

届出は店舗の所在地を管轄する警察署の生活安全課で行います。沖縄県警察本部のウェブサイトにも関連情報が掲載されています。届出は営業開始予定日の10日前までに行う必要がありますが、窓口が混雑することもあるため、余裕をもって相談・提出すると安心です。

必要書類は自治体によって若干異なる場合がありますが、沖縄県の場合、主に以下の書類が必要です。

書類の内容や追加書類は、各警察署で少し異なることがあります。

•深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書

•営業時間等の営業の方法を記載した書類

•営業所の周辺の略図(A4サイズ、インターネットの地図を使用する場合、著作権者の許可を示す書類が必要)

•営業所の平面図・求積図(縮尺1/100以上、又は1/50などの詳細図面でも可、客席、厨房、トイレなどの明示が必要。イス、テーブル、仕切りなどの配置図や寸法も記載)

•照明設備図(照明器具の配置、地面からの高さ、ワット(ルーメン)数、寸法などを記載、調光式は不可)

•音響設備図(スピーカーの配置、メーカー、出力、ワット(ルーメン)数、寸法などを記載)

•防音設備図(壁の厚さなどを記載)

•都市計画用途地域証明書(市区町村の都市計画課で発行、営業可能な用途地域であることを示す書類)

•営業所建物の登記簿謄本(全部事項証明書)または賃貸借契約書の写し

•営業所の建物所有者の使用承諾書

•飲食店営業許可書の写し

•個人の場合 住民票(本籍地入り)

•法人の場合 定款の写し、法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、役員全員の住民票(本籍地入り)、役員一覧表(役員全員の氏名・生年月日・本籍・住所・連絡先を記載した書類)

•メニュー表

•誓約書

•顔写真(1〜2枚、縦4.0㎝×横3.0㎝)

5. 届出後の注意点

届出後も、いくつかの注意点があります。

•届出時の構造・設備の要件(照度20ルクス以上、調光設備がない、騒音・振動基準を満たすなど)は、営業中も維持する必要があります。

•届出後や営業開始後に、警察による実地調査が行われることがあり、指摘事項があれば速やかに対応する必要があります。

•壁や床の遮音対策、スピーカー配置に注意し、近隣住民とのトラブル防止に努めましょう。

•入口での年齢確認を徹底し、未成年者の入店や飲酒を防止する必要があります。

•近隣住民からの苦情に備え、フローを明確にしておく。

6. よくある質問

Q: 深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業はどう違う?

A: どちらも風営法に関わるものですが、大きな違いは営業時間と接待行為の可否です。

•バーや居酒屋など、深夜0時以降も営業が可能ですが、接待行為はできません。キャバクラやラウンジのように、お客さんを接待するお店は、「風俗営業」の許可が必要で、原則として深夜0時以降の営業はできません(ただし、条例で例外的に延長が認められる地域もあります)。接待とはお客さんの隣に座る、お酒を注ぐ、一緒にカラオケを歌うなどの行為が含まれます。

同じ店舗で午前0時を境にキャバクラからバーに切り替えるといった深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業、両方の形態での営業は認められていません。

Q: お店にダーツやカラオケを設置したいんだけど、深夜営業に影響はあるか?

A: 深夜営業中に客にダーツやカラオケ等をさせる行為が、遊興行為に該当する可能性があり、設置状況や営業方法によっては風俗営業の許可が必要となり深夜営業が制限されることがあります。

デジタルダーツマシンは、場合によってはゲーム機とみなされ、設置の仕方によっては、ゲームセンター扱い(風俗営業8号)となり、そうなると深夜0時以降の営業ができなくなる可能性があります。

ただし、これは設置場所・台数・レイアウト・営業形態などによって判断が分かれるため、以下の資料を持って、所轄の警察署に事前相談するのが大切です。

  • 客室の面積・配置がわかる図面(求積図)
  • ダーツ機の設置位置や台数が記載された設備図
  • 営業内容や利用方法の説明資料

また、カラオケの設置は可能ですが、スタッフが客と一緒に歌うなど、接待とみなされる行為は深夜酒類提供飲食店ではできません。

Q: 居抜き物件でも届出はできる?

A: 居抜き物件の場合、以前のお店が飲食店で営業許可も取得していたため、そのまま許可が取れると思われがちですが、必ずしもそうではありません。

以前のお店が深夜酒類提供飲食店の要件を満たしていても、改装などで客室と厨房の区画がなくなっていたり、見通しを妨げる設備が設置されている場合があります。現在の状況が要件を満たしているか確認が必要です。

また、以前飲食店だったとしても、用途地域によっては床面積に制限がある場合や、そもそも営業が制限されている地域である可能性もあります。物件契約前に確認することが大切です。

7. 最後に

バーやスナック、居酒屋などを開業するためには、警察署への深夜酒類提供飲食店営業開始届出が義務です。

この届出は、場所や構造に関する厳しい要件を満たす必要があり、飲食店営業許可を先に取得しておかなければなりません。

また、深夜酒類提供飲食店営業開始届出の手続きは、必要書類が多く、図面作成など非常に煩雑です。

開業準備で忙しい中、これらの手続きに時間を割くのは大きな負担となるでしょう。

当事務所では、要件の確認から書類・図面作成、警察署への提出、事前相談、届出後の実地調査の同行・対応などをサポート・代行します。

もちろん飲食店営業許可の手続きも同時にご依頼いただくことも可能です。

まずはお気軽にお問い合わせください。

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