一般社団法人設立

一般社団法人の設立をご検討中の皆様、こんにちは。法人の立ち上げ、定款について沖縄県の行政書士が解説します。

目次

1. 一般社団法人の設立概要

設立の要件と費用

一般社団法人は、設立時に社員2名以上理事1名以上(理事会を設置する場合は理事3名以上が必要)がいれば設立が可能です。また、株式会社と異なり、設立時に資本金は不要であり、資本金制度がありません。

設立にかかる費用(法定費用)は、ご自身で手続きを行う場合、約11.2万円程度です。

費用項目金額(目安)概要
定款認証手数料(公証役場)5万円公証人による定款の認証費用
定款謄本代2千円程度定款の写し(ページ数による)
登録免許税(法務局への登記)6万円法人設立登記の際に納める税金(一律)

印鑑作成費、交通費、専門家報酬(全てご自身で手続する場合は不要)、その他諸経費は別途発生します。

行政書士ができること

行政書士は、一般社団法人の設立において、主に定款の作成および認証手続きのサポートを通じてお客様の事業のスタートを支援します。

1. 定款の作成代理・サポート:法人の定款を、お客様の事業目的や将来設計に合わせて作成を代理することができます。

2. 電子定款の作成:一般社団法人の定款認証においては、書面で作成された定款でも収入印紙代(4万円)は不要ですが、電子定款により手続きすることも可能です。

3. 公証役場との事前調整:定款認証に先立ち、公証人による定款原案の事前チェックや認証日の予約など、煩雑な手続きを代行し、認証をスムーズに進めます。

4. 機関設計の助言:理事会設置の有無、非営利型を目指す場合の定款への記載事項など、機関設計に関する助言を行います。

5. 設立後の運営サポート:設立後必要となる届出、総会や理事会運営に必要な書類の作成支援、事業開始に向けた許認可手続きのサポートなども行います。

行政書士が対応できないこと(他士業の専門領域による制限)

業務内容対応可否専門士業理由/詳細
設立登記の申請不可司法書士設立登記申請は、定款認証後に法務局で行う手続きであり、司法書士の独占業務です。行政書士は、定款認証手続きまでを代行し、その後の登記は司法書士に引き継ぎます。
税務申告・税務相談不可税理士決算書類の作成、法人税の申告、税務上の具体的な経営アドバイスは税理士の独占業務です。ただし、設立時の非営利型の要件確認や届出書類の作成支援は、行政書士が行えます。
社会保険・労働保険の手続き不可社会保険労務士従業員の雇用や社会保険、労働保険(労災・雇用保険)に関する手続きや相談は、社会保険労務士の専門業務です。
訴訟・係争に関する代理不可弁護士法人運営上のトラブルや係争、役員の責任追及に関する訴訟代理(代表訴訟など)は、弁護士の専門業務です。

2. 一般社団法人の定款作成

定款は、その法人の憲法とも呼ばれる重要な書類であり、設立時社員が共同して作成し、公証人による認証を受けて効力が生じます。

定款には、以下の3種類の記載事項があり、これらを適切に定めることが法人運営の基盤となります。

絶対的記載事項(記載漏れは定款無効)

以下の7項目は、定款に必ず記載しなければならず、一つでも欠けると定款全体が無効になります。

項目記載内容とポイント
1. 目的法人が行う事業活動を具体的に示します。法律や公序良俗に反しない限り、事業目的に制限はなく、収益事業も自由に行えます。将来行う可能性のある事業についても、許認可の要件等も踏まえて記載しておくことが望ましいです。
2. 名称名称中に必ず「一般社団法人」という文字を使用する必要があります。
3. 主たる事務所の所在地最小行政区画(市区町村)までの記載で足ります。番地まで記載した場合は、同一市区町村内での移転でも定款変更が必要になるため、通常は市区町村までの記載に留めます。
4. 設立時社員の氏名及び住所設立時社員個人の印鑑登録証明書と同一の氏名・住所を記載します。社員が法人の場合は、法人の名称と住所を記載します。
5. 社員の資格の得喪に関する規定社員となるための資格、入社・退社の手続き、退社事由などを定めます。社員(構成員)の変動に関わる重要な事項です。
6. 公告方法官報への掲載、日刊新聞紙への掲載、電子公告、主たる事務所の公衆の見やすい場所への掲示の4つの方法から選択し、定款に記載します。一般的には官報が多いです。
7. 事業年度法人の決算月を定めます。税理士さんと相談、または設立初年度の期間設定や、繁忙期を避けるなど、事務負担を考慮して決定します。

相対的記載事項(記載して初めて効力を生じる事項)

相対的記載事項とは、法令の規定により、定款の定めがなければその効力を生じない事項を指します。

内容を定款に記載しなければ、その特約や制度自体が法的な効力を持たないため、記載の要否を検討する必要があります。

一般社団法人における主な相対的記載事項は以下の通りです。

運営・機関設計に関わる事項

1. 社員総会以外の機関の設置に関する定め:理事会、監事、または会計監査人を設置する場合の規定です。理事会を設置する場合、理事は3名以上、監事は1名以上が必要となります。

2. 理事の任期の短縮に関する定め:理事の任期は原則2年ですが、定款の定めにより短縮することが可能です。役員重任登記は原則2年に一度必要です。

3. 監事の任期の短縮に関する定め:監事の任期は原則4年ですが、定款の定めにより短縮することが可能です。

4. 代表理事の互選規定

5. 理事会や社員総会の決議要件に関する別段の定め:社員総会の決議要件、定足数、または理事会の定足数・決議要件について、法令に別段の定めがある場合を除き、規定を設けることができます。

6. 社員総会の招集通知期間に関する定め

7. 理事会・社員総会の決議の省略に関する定め

8. 理事の業務の執行に関する別段の定め

9. 理事等による責任の免除に関する定め

10. 外部役員等と責任限定契約を締結することができる旨の定め

11. 代表理事の理事会に対する職務の執行状況の報告の時期・回数に関する定め

12. 清算人会を置く旨の定め

社員・費用に関わる事項

13. 経費の負担に関する定め:社員は法人の目的達成に必要な経費を支払う義務を負うとされますが、この負担に関する詳細な定めを設けることができます。

14. 任意退社に関する定め:社員が退社する際の予告期間など、任意退社に関する規定を定めます。

15. 定款で定めた退社の事由:除名以外で、定款に定めることで社員の資格を喪失させる事由に関する規定です。

16. 設立時役員等の選任の場合における議決権の個数に関する別段の定め

17. 議決権の数に関する別段の定め

資金調達に関わる事項

18. 基金を引受ける者の募集等に関する定め:基金制度を導入する場合、定款に必ずこの規定を設ける必要があり、記載がなければ効力は生じません。

任意的記載事項(記載は自由だが法的なルールを補完する事項)

任意的記載事項とは、法人の基本事項(絶対的記載事項)や、法律上特別な効力が発生する事項(相対的記載事項)以外の、その他の事項で、一般法人法の規定に違反しないものを指します。

これらは法人の具体的な運営の細則を定めるために用いられ、定款に明記することで、設立後の運営における意思決定の透明性を高めることができます。

主な任意的記載事項は以下の通りです。

1. 役員等の員数:理事や監事の具体的な員数を定めます。例えば、「理事3名以上5名以内」のように記載します。

2. 理事の報酬:理事や監事の報酬、賞与その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益は、社員総会の決議によって定めることが一般的ですが、その定めについて記載されます。

3. 監事の報酬

4. 社員総会の招集時期:定時社員総会を毎年何月に開催するかなど。

5. 社員総会の議長

6. 清算人

7. 残余財産の帰属:解散時に残った財産(残余財産)を、国や地方公共団体、または特定の公益法人等に贈与する旨を定める規定です。この規定は、法人の非営利型法人(税制優遇)の要件を満たすために必須となります。 相対的記載事項(記載することで効力が生じる事項)

機関設計と税制上の選択

定款作成時には、法人の組織形態と税制上の取り扱いを決定します。

理事会設置の有無 理事は必置ですが、理事会、監事、会計監査人は定款の定めにより設置が可能です。

    ◦ 理事会を設置する場合、理事は3名以上、監事は1名以上が必要となります。

非営利型法人を目指すか

一般社団法人には営利型と非営利型があり、非営利型として認められると、原則非課税となり収益事業に関してのみ課税されます。

非営利型を目指す場合は、定款に以下の要件を定める必要があります。

    1. 剰余金の分配を行わない旨の定め。

    2. 解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与する旨の定め。

    3. 上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与する旨の定め。

    4. 理事の総数に占める特定の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)等の理事の割合が3分の1以下であること。

非営利型に該当する場合は、原則、設立時に税務署への届出が必要です。

無益的記載事項(記載しても無効な事項)

一般社団法人は非営利法人であるため、以下の定めは無効となります。

• 一般社団法人の社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定め。

• 法律の規定により社員総会の決議を必要とする事項について、理事、理事会その他の社員総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定め。

• 社員総会において決議をする事項の全部につき社員が議決権を行使することができない旨の定款の定め。

3. 一般社団法人の設立ステップ

一般社団法人の設立は以下の主要なステップで進められます。

1. 設立時社員の決定:社員2名以上を決定します。

2. 定款の作成:法人の基本事項を決定し、定款を作成します。

3. 印鑑証明書の準備:社員および役員の印鑑証明書を取得します(発行後3ヶ月以内)。

4. 定款認証:主たる事務所の所在地の都道府県内にある公証役場で認証を受けます。

5. 設立時役員の決定・事務所の決定:理事(代表理事)を決定します。定款に役員や主たる事務所を定めていない場合は、別途決議書が必要です。

6. 登記申請:法務局へ設立登記を申請します。申請日が法人の設立日となります。

設立手続きはご自身で行うことも可能ですが、行政書士は設立後の運営を見据えた機関設計の検討段階から関与し、お客様の事業活動に最適な法人設計をサポートします。

行政書士の専門業務範囲外の手続きについては、他士業と連携してスムーズな設立を実現します。

終わりに

一般社団法人は、幅広い活動に柔軟に対応できる法人格です。

設立後の運営で後悔しないよう、設立の段階で定款の内容などを深く検討することが不可欠です。

沖縄県の行政書士事務所である当事務所では、お客様の事業の成功と安定的な運営のサポートをさせていただきます。

お気軽にご相談ください。

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