デリバリーヘルス(デリヘル)の開業は、店舗型の性風俗店に比べて初期費用を抑えやすく、新規参入しやすい業種であるといえますが、沖縄県で適法に事業を運営するためには、風営法および沖縄県条例に基づく届出義務と運営ルールを遵守する必要があります。
この記事では、沖縄県でデリヘル開業を目指す皆様が、法令を遵守し、スムーズに事業を開始できるよう、届出の流れ、事務所・待機所の要件、そして注意すべき点について解説します。
1. 沖縄県での届出の流れ
デリヘル営業を開始するには、営業開始日の10日前までに、事務所の所在地を管轄する公安委員会(沖縄県警察署)へ届出書類を提出する必要があります。これは「届出制」であり「許可制」ではありません。
届出の流れ(一般的な手順)
1. 所轄警察署への事前相談(推奨): 届出に必要な書類や物件の要件、沖縄県警(公安委員会)の運用基準について、事前に警察署に相談することをおすすめします。
2. 必要書類の準備: 個人・法人別、事務所・待機所ごとに必要な書類を収集・作成します。
3. 届出提出: 営業所所在地を管轄する警察署へ書類を提出します。届出は予約制の場合もあるのであらかじめ確認のうえ必要であれば予約しましょう。この際、手数料として3,400円が必要となります。
4. 審査:届出受理後、審査が行われます。
5. 営業開始:届出をした10日後から営業を開始できます。
6. 届出確認書の交付:届出から約1~2週間後に届出確認書が交付されます。この確認書がないと、広告媒体に掲載できない場合があります(3,400円の領収証でも可の場合あり)。
罰則
届出を行わずに営業を開始した場合、風営法違反となり、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(または懲役と罰金の両方)に処せられるほか、営業の全部または一部の停止が命じられます。
特に、2025年6月に施行された改正風営法により、無許可営業等の罰則が大幅に強化されており、個人は拘禁刑5年以下または罰金1,000万円以下、法人は罰金3億円以下となる可能性があります。
2. 事務所と待機所の要件・探し方
無店舗型性風俗特殊営業では、営業の本拠地となる事務所の確保が必須です。
事務所に関する要件(場所の規制なし)
デリヘルの事務所の所在地には、店舗型営業とは異なり、地域や専有面積などの制限はありません。事務所にはお客様が直接出入りしないため、保全対象施設(学校、病院など)の近くであっても届出は可能です。
使用権原の証明(使用承諾書)
最も重要であり、かつ難易度が高いのが、事務所として使用する物件の使用権原を有することを疎明する書類を提出することです。
• 賃貸物件の場合: 賃貸借契約書の写しに加え、物件の所有者(大家さん/オーナー)から「性風俗営業の事務所として使用してよい」と明記された使用承諾書が必要です。一般的な居住用賃貸マンションでは、使用承諾書の発行はほとんどの場合されません。
• 自己所有物件(持ち家)の場合: 建物の登記事項証明書(全部事項証明書)を提出することで使用権限を証明できます。
• 実家(親族の持ち家)の場合: 自身の持ち家でなくても、親族の所有物件を使用する場合は、建物の登記簿謄本、所有者からの使用承諾書、物件を借りることを説明する理由書を用意することで届出できる場合があります。
事務所を確保する際は、風俗営業対応の不動産業者への相談、また事前に所轄の警察署に相談し、適切な物件を確保することが重要です。
待機所(従業員の待機場所)について
待機所とは、客の依頼を受けて派遣されるキャストが待機するための施設です。
• 設置は任意であり、事務所内に併設することも可能です。
• 待機所にも地域や専有面積の制限はありません。
• 設置する場合、事務所と同様に待機所の平面図および使用権原を証する書類(使用承諾書など)が必要です。
• 待機所を事務所と異なる市町村に設けること、事務所の移転や待機所の移転・追加が可能です。
受付所に関する規制
お客様が出入りし、コースや指名、金銭のやりとりをする場合や、事務所に従業員の写真が貼ってあり、お客さんが事務所に貼ってある従業員の写真を見て指名できるような場合は、受付所となります。
• 受付所は原則ほとんどの地域で新規に受付所を設けることはできません。
3. 開業に必要な主な書類一覧
届出には、沖縄県公安委員会に提出する以下の書類が必要です。
その他状況によって別途書類を求められる可能性もあります。
| 書類名 | 内容 | 個人で届出する場合 | 法人で届出する場合 |
| 営業開始届出書 | 沖縄県警のウェブサイトで入手。 | 〇 | 〇 |
| 営業の方法を記載した書類 | サービス内容、広告方法、18歳未満の者への対応策などを具体的に記載。 | 〇 | 〇 |
| 住民票の写し | 本籍地記載のもの(発行から3か月以内、マイナンバーの記載がないもの)。 | 〇 | 〇 代表者および役員全員 |
| 事務所の使用権原疎明書類 | 自己所有: 登記事項証明書。 賃貸: 賃貸借契約書、使用承諾書。 | 〇 | 〇 |
| 事務所の平面図、周囲の略図 | 間取り、設備配置を示す図面。 | 〇 | 〇 |
| 待機所の書類 (任意) | 平面図、使用権原疎明書類(設ける場合)。 | 〇 | 〇 |
| 定款の写し | 事業目的に「無店舗型性風俗特殊営業を行う旨」の記載が必要。 | 〇 | |
| 法人登記事項証明書 | 最新のもの。 | 〇 |
4. 開業・運営に関するコンプライアンス上の重要な注意点
デリヘル経営では、届出後の法令遵守が重要であり、違反は行政処分や刑事罰の対象となります。
(1) 広告・宣伝に関する厳格な規制と沖縄県の制限
デリヘルは屋外での広告や宣伝活動が原則禁止されており、集客は主にホームページなどのインターネット広告になります。その広告表現は風営法や青少年保護育成条例によって厳しく規制されています。
沖縄県では条例により、実質的に県内のほとんどの地域で広告が制限されており、表示できる場所や手段が限定されます。
(2) 従業員名簿の義務と年齢確認の徹底
• 従業員名簿の作成・保管: 営業に従事する者全員(キャスト、スタッフ、ドライバーなど)について、従業者名簿を作成し、事務所に備え付けておくことが義務付けられています。
記載事項は、氏名、住所、生年月日、性別、採用/退職年月日、従事する業務の内容などが必要です。
• 年齢確認の義務: キャストおよび客の双方が18歳以上でなければなりません。
雇用時には運転免許証やマイナンバーカードなどの顔写真付き身分証明書を用いて、厳格に年齢確認を行う義務があります。18歳未満の女性を雇用した場合、児童福祉法違反や風営法違反(年少者使用)といった重い罪に問われる可能性があります。
(3) 本番行為(売春行為)の防止
性交(本番行為)売春防止法違反にあたります。経営者が売春行為をあっせんした場合には、2年以下の懲役、または5万円以下の罰金という刑事罰が発生する可能性があります。
経営者は、本番行為が行われないよう、ホームページへの禁止明記、従業員への誓約書取得、指導の徹底などの対策を講じる必要があります。
5. 行政書士に依頼するメリット
沖縄県でのデリヘル開業は、風営法に加え、沖縄県条例の規制や、事務所物件の要件、書類作成など、多くの知識と時間が必要です。
当事務所に依頼することで、以下のメリットが得られます。
1. 物件選定サポートと使用承諾書取得: 物件所有者からの使用承諾書の取得に向けたアドバイスや、事務所や待機所に適した物件探しのサポート
2. 事前相談と要件確認 営業形態に応じた法的要件の説明や沖縄県の条例に基づく規制の確認
3. 書類作成の迅速化と正確性の確保: 必要書類の収集のサポート、届出書類の作成により不備を防ぐことで、スムーズな届出を実現できます。
4. 警察署との折衝代行: 事前相談や追加書類の提出など、警察署とのやり取りを代行し、事業者の負担を軽減できます。
5.営業開始後のサポート 従業者名簿の作成と管理方法の指導、変更届・廃止届の作成と提出など具体的な指導を受け、摘発リスクの低い健全な運営を目指すことができます。

